医療訴訟のメモ

「見落とし・不手際=注意義務違反」の規準となる医療水準とは
1)医学論文
2)医学教科書
3)学会のガイドライン
という順で、期待されて当然という水準「あるべき医療」として判断される。

「医療水準は、医師の注意義務の規準となるものであるから、平均的医師が現に行なっている医療慣行とでもいうべきものとは異なるものであ(る)」
最高裁判決・伊藤正己裁判官補足意見/最高裁昭和63年1月19日小法廷判決(未熟児網膜症)/裁判集民153号17頁/判例タイムス661号141頁

「医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。平成4(オ)251 損害賠償 平成8年01月23日 最高裁判所第三小法廷」
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122957127226.pdf

【過失と医療水準の関係】
 最高裁平成8年1月23日判決は、医療水準について次のように述べています。
「 具体的な個々の案件において、債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは、一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最高裁昭和54年(オ)第1386号同57年3月30日第3小法廷判決・裁判集民事135号563頁、最高裁昭和57年(オ)第1127号同63年1月19日第3小法廷判決・裁判集民事153号17頁参照)。
 そして、この臨床医学の実践における医療水準は、全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく、診療に当たった当該医師の専門分野、所属する診療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが(最高裁平成4年(オ)第200号同7年6月9日第2小法廷判決・民集49巻6号1499頁参照)、医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない。」
http://homepage2.nifty.com/kanasou/soudanrei/iryoukago.htm

期待権
「患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に、医師が、患者に対して、適切な医療行為を受ける期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは、当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものである」
http://d.hatena.ne.jp/kusunokilaw/20110228
http://www.doctor-agent.com/da/member/service/knowledge_malpractice_detail?mode=preview&id=52
http://himejishimin.com/blogContent.php?blogID=c95d464a-e0c0-102e-a4fd-69288e4fe078


因果関係の立証は、「80%以上の可能性」名古屋地裁裁判官言。

【相当程度の可能性】
最高裁第二小法廷(平成12年)平成9年(オ)第42号 期待権判例
不誠実な医療自体、損害賠償の責任がある(過失あるも死亡との因果関係が証明されない場合でも過失に対しては慰謝料を支払う責任がある)
「疾病のために死亡した患者の診療にあたった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、上医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である」
http://www.doctor-agent.com/da/member/service/knowledge_malpractice_detail?mode=preview&id=52

【高度の蓋然性】
「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」 最高裁第二小法廷(昭和50・10・24)昭和48年(オ)第517号東大ルンバール事件判例

【相当因果関係の有無】
補足/http://www.watanabelaw.jp/seminar/pdf/i-91.pdf

★「相当程度の可能性」をめぐる混迷〜橋口賢一
http://160.26.199.7/dspace/bitstream/10110/1821/1/0733005307.pdf
★医療訴訟における「相当程度の可能性」の漂流〜石川寛俊. 大場めぐみ.
http://kgur.kwansei.ac.jp/dspace/bitstream/10236/6541/1/61-3-2.pdf