にわかに大忙し。ここ1週間はキツイ( ̄□ ̄;)!!

 7月20日付でメールを頂きましたが、メールボックスを見ておりませんでした。
返信しました。失礼しました。

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医療過誤の調査方法(患者側)

【基本的な流れ】
1) 医学資料を揃える。具体的方法は下記。
2) 弁護士を説得する。3人3事務所以上はあたる。
3) 裁判所の証拠保全手続きでカルテを入手。証拠保全決定の告知はできれば同時送達。
 カルテは全部エクセルに打ち直さないと見落としが出る。特に看護記録は重要。
 証拠保全でも改竄がありえるとして、どこを改竄されているかも検討。

※過誤調査が目的の場合、厚労省通達による「カルテ開示」すなわち、自分で病院にカルテの開示請求することは、「改竄してくれ」と言っているのと同じことになるので厳禁。労災申請など、別の目的であるなら可。

※そして、もうひとつ、合法的な、第三のカルテの入手方法があるようです。証拠保全の失敗や禁忌を知らずにカルテ開示してしまった場合の「カルテのすっぽ抜け」などに有効。弁護士に聞いてください。コロンブスの卵のようなもので気づきにくいのですが、この手の対処法は、モグラ叩きかイタチごっこの様相があるので。

4) カルテ入手後、レセプトをとる。(レセプト申請時に病院に連絡がいく)
 カルテとの照合。多少の差は出ることもあるが本論ではない。改竄箇所の発見方法のひとつ。
5) カルテを丁寧に検討して戦略を考える。もちろん、相手の反論ストーリーも検討。論の立て方が重要。
6) 賠償請求を行い示談交渉。決裂で提訴。

【経過表を作る→医学資料収集→過誤ストーリー構築】
1)できるだけ詳細に経過表を作る。時系列の経過表は絶対に必要。これを使って弁護士を説得する。経過表は、カルテがない段階でしっかり作る。
「事実」と「憶測・想像・気持ちなど」とは、必ず分けて書く。
※参考見本
http://yahoo.jp/box/XOzcGs
http://yahoo.jp/box/OBI19H
http://yahoo.jp/box/b8pUrK

2) できればCD-ROM「今日の診療プレミアム」(医学書院)で調べてキーワードを摘出。医学辞典、医学教科書(医学書院の標準シリーズなど)でもいい。
3) そのキーワードを使って国会図書館NDL-OPAC雑誌論文検索郵送複写サービスで同じ症例を探す。
4) その医学論文の引用や参考文献をチェック。基礎へあるいは展開へ詳細を調べる。ガイドラインなども全部確認。
5) 教科書的な基礎文献でも叩けるよう用意。
6)類似の判例を探す。「ケースファイル」など。
 判例を検討するときは、疾病部位だけではなく、医療過誤のタイプ別の(禁忌型、手技ミス型、療法選択ミス型、不作為型など)論の立て方にも留意。
7)弁護士用の本を読む。
※参考書籍
「裁判実務シリーズ5-医療訴訟の実務」(高橋譲編著/商事法務)
「リーガル・プログレッシブ・シリーズ8-医療訴訟」(秋吉仁美編著/青林書院)
「専門訴訟講座4-医療訴訟」(浦川道太郎他編/民事法研究会)
「実務医療過誤訴訟-訴訟における専門的アプローチとノウハウ」(上田和孝著/民事法研究会)
「弁護士専門研修講座-医療過誤訴訟の専門知識とノウハウ」(東京弁護士会他編/ぎょうせい)
「専門訴訟体系1-医療訴訟」小山稔他編/青林書院)
など。
8) 助言医師や意見医師は、自分でつかまえたほうがいい。弁護士のツテももちろんいいが、直接会話ができる形が望ましい。これらの資料等には数十万円は投入する。

【証拠保全での弁護士の役割】
 証拠保全で弁護士が必要なのは、執行当日現場でカルテのチェックをさせるため。現場で異議申立が必要な場合もある。経験者でないとカルテのヌケがわからない。
※参考文献「証拠保全の実務」(東京地裁証拠保全研究会編著/きんざい刊)

【医師意見書(私的鑑定書)の必要性】
 一般民事裁判との違いは、主張に医師意見書による裏付けが必要なこと。素人がどんなに正確に医学文献をもって説明しても、全く価値が認められない。この協力医師の獲得がもっとも困難だし、労力と費用がかさむ。
 もし提訴前に医師意見書を準備できれば、示談交渉での説得力が増す。示談交渉で重要なのは、相手に、裁判を予定しているとわからせ、その裁判で病院が負けそうだと思わせること。

【裁判はただの弁論大会】
 裁判は、真実を見つけるためではないので注意。真実なんか裁判をやる前にわかっていないといけない。
 裁判になると、相手は、言ったこともひっくり返して、ただ闘ってくる。病院損保の損益問題にすぎないからです。
 裁判は当たるも八卦なので、よほど意地を通したい場合は別として、示談で決めれるものは示談で決めたほうが良いとは思う。
 刑事事件では検事が事件を調べて追求する。しかし、民事では検事はいない。民事では、なんの権限もない個人が、証拠と証人を集めて立証しないといけない。
 裁判所は双方の主張を聞いて、もっともらしいほうに軍杯をあげる。裁判所は原則的に独自判断はしない。

【裁判を知る】
 裁判前には、地裁高裁の医療訴訟の書面を閲覧する(事件番号が必要)と良い。書面の項目と内容がわかるだけでもずいぶんと違う。証人尋問のあるもの。カンファレンス鑑定や医師対質尋問でもあればベスト。類似事案なら意見医師の名前もわかる。

【裁判進行の注意】
 裁判所鑑定(裁判所が鑑定人を指定する形)は絶対に避ける。両者合意の上なので、反論できない。
 近年の裁判は早い展開となっている。しっかり準備して、はじまったらバンバン撃つ。おたおたしてたら時間切れで敗訴。提訴してから意見書を書いてくれる医師を探しているようでは、泥縄。
 一審が勝負。結審しても出せる書面は出す。二審はただの延長戦で「逆転はない」と思ったほうがいい。

【勘違いしやすいこと】
 賠償責任のある過誤かどうかは、自分で決めるものです。必要な医療水準の要求です。
それを相手に認めさせることができるかどうかの問題。ですから、途中、過誤でないとわかったら、あるいは過誤であると確信があっても、どこで降りてもかまわない。

【弁護過誤】
 医療事件では弁護過誤が多発しているとみる。
 一定の期間だけ意思疎通が円滑でない場合も含めて、大なり小なり弁護過誤があるのが普通です。依頼者がはじめての裁判なら手抜きをされていてもわからない。
 医療事件では、ブチ切れた原告、弁護士を何人も渡り歩いた原告は、少なくないと思います。弁護士のせいで負ける。勝つはずの事件で負ける。あるいは、勝っても納得がゆかない。
 敵と闘う前に、味方と闘わないといけない。
 初回相談時、良い弁護士は選択肢を端的に説明して、相談者に選ばせる。
 その選択肢が合っているかどうかは、自分が弁護士用の本を調べていればわかる。
知らないからプロに頼むのに、なぜ、そんなことが重要かというと、医療事件では弁護過誤が多いと思うからです。
 弁護士におまかせでやってはならないと思う。
 弁護士が、知り合いの医者に電話で3分聞いただけで、勝てるかどうかを判断されたとしたら、貴殿はそれで良いのか?

【裁判の辛さの覚悟】
 医療事件なので、医者なら3秒でわかることを、素人は3カ月かけて調べる。その労力や費用は大変なものだが、もっと辛いことが起きる。 
 人間関係の地図は塗り変わります。圧倒的に多くの人か原告を非難します。
 友人、職場、ご近所。みんな陰口を叩いていると思って間違いない。「そんなに金が欲しいのか?」「病院に勝てるわけないだろ。馬鹿じゃないのか?」「嫌なら医者にかかるな!」これを親しい身近な人に言われたときのショックは相当ですよ。
 完全に孤立します。そのくせ、勝ったら勝ったで、獲得した賠償金にあれこれ口を出してくる。 
 そして、いつもの難題は、家族です。死亡事件なら相続人全員の意志統一が必要です。
 家族の同意を得るために提訴を10年待った人もいます。なんとか同意を得て訴訟したものの、医療事件では必死で勉強しないといけないし走り回ることになるので、もともと積極的ではなかった家族は必ず反感を持つ。そうして最悪というべきか、やっと本性がわかったというか、裁判が終わったら離婚となります。そのくらい生き方を問われることになるでしょう。

 人と同じように遊ぶ時間はない。人と同じようにテレビに興じてる暇はない。仕事がなんらかの形で破綻することも珍らしくないでしょう。
 専門家に太刀打ちするには、人生を捨てるしかないんですわ。それが賭け金です。裁判が終わっても、しばらくは余波が続きますね。