お前。精神病なのか!

「お前。精神病なのか!」
今どき、妙なことを言われた。
睡眠導入剤デパスを飲んでいるくらいで、そんなことを言う奴はいない。
実に新鮮な言葉だったが、僕はカウンセラーだ。

僕らが卒業してから、3年か5年ほど経った頃の写真だ。
 あの頃君は、フリーライターで、ガンガンに稼ぎまくっていた。年収は僕の倍以上あって、飛ぶ鳥を落とす勢いではなかったか。そして、ひとつの時代をつくった。
 僕は、映像プロダクションで、制作進行をやっていた。家に帰りつくことができないほどに、死ぬほど働いていた。そして全国コンクールで次々と入賞していった。過労のためか、仲間は次々と交通事故を起こし、車を何台も大破していた。僕は、救急車で2回運ばれた。
 ジーパンのほころびが悲しく。街を歩くのが悲しく。ひとり飯を食うのが悲しかった。
 写真は、東洋現像所(イマジカ)でビデオやフィルムの変換をするために上京したとき、母校を訪ねたときのものだ。
 君は、編集部でゴミ山となった机の前に座り、引っ張りだした引き出しの上でペラの原稿を埋めていたことだろう。

 人はそのうち必ず死ぬ。
 わざわざ急ぐ必要はない。もう少し様子を眺めていよう。
 今、君は、僕の4、5倍の収入があるだろう。まだまだ、大丈夫だ。
 
 ホームページ制作を頼んできていた友人が、業者に頼むから、もう気にしなくて良いと言ってくれた。つくってみたかったサイトなので、やはり無念だが、実は助かった。
 残念だが、もうオーバーワークというか、オーバーヒートで、抗不安剤デパスが必需状態なので、戦線の撤退が少しでもあるのは、ほっとした。
 君のソラナックスも飲んでみたい。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 2005年管制塔占拠損害賠償1億円カンパ運動で、ともに心を震わせた人。
 祝賀パーティーでお会いした1951年生まれの明大黒ヘル【aaghさん】が副腎ガンのために亡くなったそうだ。


「闘争勝利!」と言い続けること。


ヘルメットにゲバ棒。爺さんの若い頃の話だ。
年寄りの回顧にすぎないと思う人もいるだろう。
でも、あの時代のことは、違う。


誰しも、青年期には、人間と社会のすべての秘密を知るときがある。
その感覚を持たなかった人は、不幸であろう。
ヘーゲルマルクスを読まなくても、ニーチェサルトルを読まなくても。
偽善や欺瞞、嘘つき、汚らしい自分勝手な欲望とご都合主義。
建前の向こうに、全ての真実が透けて見えてしまうときがある。


でも、それは、はなはだ心もとないもので、
ひとりではどうしようもない現実を前にして、ひと吹きでかき消されてしまう。
未熟な精神は、どうしたらいいのかわからずに、
そのまま、炎を忘れ去って、大人の社会の慣習にのまれてゆく。


だが、そのとき、あの時代がある。
先進国の大学に吹き荒れた学生運動がある。
異議申立が具現化された闘いの姿がある。
直感は正しいと証明してくれた。
結果がどうであるかは、問題ではない。


それは、何歳になっても、燃え尽くしたはずの命を甦えらせてくれる。
このノスタルジアは、
人類史にとって、必要不可欠な時代なのであると思う。


それから、ずいぶんと遅れてきた僕も、そうして今を闘っている。
残念ながら、僕の時代は、中核派の恐怖自治のなかにあって、
素直にヘルメットをかぶる気にはなれなかったが、
あの時代がなければ、僕は、どうなっていたかわからないだろう。


きっと、そこそこの収入と平穏に満たされて、
ちまちまと愚痴を言いながらも「幸せ」に暮らしていたのではないかとも思う。
そして、ホームレスを人ごとだと考え、
「赤たち(共産主義者)」を馬鹿な連中だとしか思わなかったのではないかと思う。


人助けは、余裕のある人がやるもんだ、と、人は言う。
でも、余裕のある人は、人助けをしようなどとは思わないだろう。
他人のことを、自分のことだと考えることはしないだろうと思う。
自分のことで精一杯だと言っている人は、いいわけにすぎない。


「30歳以上の人間を信用するな。原則的には賛成だ。但し、言わない方がもっと良い。」
(いちご白書/ジェームス・クネン)
 僕たちは、もうこれ以上、闘い続ける必要のないための最後の戦闘を、闘わなくてはならない。
 そんなことも書いてあったと思う。


Where Have All The Flowers Gone?    
                          花はどこへ消えた  (訳詞: ゆうこ)

Where have all the flowers gone?       花は みんな どこへ消えたんだろう
Long time passing.                 長い年月が過ぎた
Where have all the flowers gone?       花は みんな どこへ消えたんだろう
Long time ago.                     あれは もう 昔のこと
Where have all the flowers gone?      花は みんな どこへ消えたんだろう
Young girls picked them, every one.     娘たちが 摘んでしまったのさ

Oh, when will they ever learn?         ああ、いつになったら 人は学ぶのか
Oh, when will they ever learn?         ああ、いつになったら 人は学ぶのか

Where have all the young girls gone?     娘たちは みんな どこへ消えたんだろう
Long time passing.                 長い年月が過ぎた
Where have all the young girls gone?     娘たちは みんな どこへ消えたんだろう
Long time ago.                    あれは もう 昔のこと
Where have all the young girls gone?     娘たちは みんな どこへ消えたんだろう
Gone to young men every one.         若者のところへ 行ってしまったのさ

When will they ever learn,             ああ、いつになったら 人は学ぶのか
When will they ever learn,             ああ、いつになったら 人は学ぶのか

Where have all the young men gone?     若者は みんな どこへ消えたんだろう
Long time passing.                 長い年月が過ぎた
Where have all the young men gone?     若者は みんな どこへ消えたんだろう
Long time ago.                    あれは もう 昔のこと
Where have all the young men gone?     若者は みんな どこへ消えたんだろう
Gone for soldiers every one.           兵士になりに 行ってしまったのさ

When will they ever learn,             ああ、いつになったら 人は学ぶのか
When will they ever learn,             ああ、いつになったら 人は学ぶのか

Where have all the soldiers gone?       兵士は みんな どこへ消えたんだろう
Long time passing.                 長い年月が過ぎた
Where have all the soldiers gone?       兵士は みんな どこへ消えたんだろう
Long time ago.                    あれは もう 昔のこと
Where have all the soldiers gone?       兵士は みんな どこへ消えたんだろう
Gone to graveyards every one.         墓に入ってしまったのさ

When will they ever learn,            ああ、いつになったら 人は学ぶのか
When will they ever learn,            ああ、いつになったら 人は学ぶのか

Where have all the graveyards gone?     墓地は みんな どこへ消えたんだろう
Long time passing.                 長い年月が過ぎた
Where have all the graveyards gone?     墓地は みんな どこへ消えたんだろう
Long time ago.                    あれは もう 昔のこと
Where have all the graveyards gone?     墓地は みんな どこへ消えたんだろう
Gone to flowers every one.           すっかり 花に おおわれたのさ

When will they ever learn,            ああ、いつになったら 人は学ぶのか
When will they ever learn,            ああ、いつになったら 人は学ぶのか

歌: Joan Baez  ジョーン・バエズ 2009年 (68歳)