続いて裁判の仕組み

後だしジャンケン禁止】

  実際にはほとんど適用されないが、「時機に遅れた攻撃防御方法」なんてのもある。終わった議論に、後から付け足しては駄目というわけだ。
  それで、準備手続き(公判前整理手続き)を経た場合、予定外の証拠は提出の理由(遅刻の理由と必要性)を述べなくてはならない。
  昨日、応援に行った結審でも、執念で陳述書を提出していた。被告からの抗議もあり、形式上は「結審後の提出」の形となったが、実質的には裁判官は判決前に見ていることになる。

 民事訴訟
(攻撃防御方法の提出時期)
 第156条 攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。
(時機に後れた攻撃防御方法の却下等)
第157条 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

  僕が関わった控訴審でも、被告弁護士はこれを主張してきたが却下された。敵も、とことん抵抗する。それが、お仕事。

  医療過誤事件にはこれは厳しい。はじめから全部わかってたら、こんな楽なことはない。わからないから苦しむのだ。知ってる人がいるのに、誰も教えてくれないからだ。みんな、ずるいのだ。 闘いをはじめた人には、信用できる人は極めて限られてくる。


【延長戦の確率】

 高裁で逆転できる可能性は低い。だから、逆転判決が新聞記事になる。

 控訴率
 平成13年全訴訟の11.8%
 平成19年全訴訟の10.0%
(これは高裁への申し立て人員なので、控訴棄却もカウントされていると思うが、よくわからない)
 高裁の受件件数でいくと、控訴率は平成13年度全訴訟の21.3%
(人数より件数が多いというのは、不思議。わからない)

  おっかしいなあ。どっかに民事の控訴率と逆転率があったんだけど、あると思ってた箇所(六法)には、これしか見つからなかった。記憶では逆転3割だったか。
  ああ。最高裁ホームページにありそうだな。統計は統計なんで、そう意味があるとは思わないが。ここらかな?
http://www.courts.go.jp/about/siryo/jinsoku/hokoku/02/hokokusyo.html


最高裁は、判決への抗議のみ】

  さらに、最高裁は、裁判のルールの検討や憲法判断で、ほとんどの場合、事件の内容を検討するのではない。たいていは書類上の事務手続きみたいなもん。
  でも、みんな「裁判は3回できる」と思っているから、上告(出発が簡易裁判所のときは上訴)して駄目なら納得がしやすいし、判決への抗議の意味を込めて、印紙代が出せるならば、最高裁に持ってゆくべきだと思う。

  但し、この抗議へのお返事は、「棄却します」のみ。
  
  僕が関わってきた事案で、最高裁での陳述が認められたのは、昨年のパナソニック大阪派遣裁判と一宮身体拘束事件。両者とも、きわめて異例のこと。おまけに両方とも、まさかの逆転敗訴となった。
  
  原則的には、これ以上先の法廷闘争はない。しかし、裁判は、所詮、現体制の維持が目的である。判決の法的解釈を慎重に検討するとともに、民意の力で押すという戦術は残っている。そうして時代は変わってゆくのである。